双方向広告のひとつの形 - lonelygirl15

ARGファン達にはマストツールとなりつつすらあるYoutubeという動画投稿サイトがある。
ここでは無料で動画をアップロードし、それを無料で閲覧し、コメントすることができる。
大雑把に言ってしまえばそれだけの機能なのだが、これらが持つ可能性は計り知れない。
それをARG的なマーケティングに利用した一例として「lonelygirl15」を挙げよう。

YouTube - LonelyGire15
YouTube - LonelyGire15日本語解説 (timtak1氏のとてもファニーな投稿動画)

Viloger "Bree"

まず最初に動画があった。
日本ではmixiやblogなどによるコミュニケーションサイトが大変普及しているが、
海外ではそれ以外に、Vlog、Vilogといった個人で撮影したプライベート動画を交換するといった
コミュニケーション方法が広く楽しまれている。
それらは他愛もない世間話のようなものから自分のダンスを披露するビデオ、
場合によっては深刻な悩みの相談まである。
ハンドルネーム「lonelygirl15」で動画をアップロードする16歳の少女「Bree」もそんなVilogerの一人だった。

彼女は厳格な宗教家である両親の目を盗みながら、YouTubeにボーイフレンドの話や、家族の話、ちょっとした悩みなんかを打ち明けていた。
YouTubeのユーザー達はそのキュートな彼女に釘付けとなり、多くの人が彼女にコメントを寄せた。

彼女は2.3日に1度程の頻度でムービーをアップロードし、その中でコメントをつけてくれた方への返答をしたり他のVilogerへのコメントをしたりして、どんどんとその閲覧者を増やしていった。
そんななか、彼女の周りに少しずつ異変が起こっていく。
両親が熱心に崇拝するカルトな宗教や彼女に対する束縛等の悩みを、少しずつ彼女が暴露しだしたのだ。
多くのユーザーが心配し彼女を励ますと同時に、少しの疑念が生まれていく。

"Bree"の正体と、彼女のその後

「あまりにできすぎた話じゃないか?」

不審に思った閲覧者達は彼女のムービーを余すことなく見直し、
ちょっとした矛盾点や齟齬から次々と彼女等の秘密を暴いていく。
そしてある日ニューヨークタイムズの『ひとりぼっちの女の子はただ映画界入りしたかっただけ』という記事で
彼女らの真実が暴かれた。
そう、彼女は16歳の少女を演じていた女優だったのだ。

この不思議なVilogerの生みの親はMiles BeckettとMesh Flindersという映画製作者で、
"Bree"はJessica Roseという当時19歳の女優が演じていた。
彼らは「ブレアウィッチプロジェクトの様な映像作品を作るつもりだった」と語っている。
動画によせられるコメントを劇中に取り入れた、ホラー作品にしていく予定だったらしい。

この一連の騒動の中で、もっとも興味深いのは「ネタバレ」のその後だ。
彼女"等"は未だ"Bree"として16歳の日常をVilogとして公開し続け、
閲覧者達もその他愛もない悩みに親身になってコメントをつけ続けている。
製作者達にその意思がなかったとしても、これは完成された一つのARGではないだろうか?
また、彼女"等"の作品からスピンオフした形で提供されたARGキャンペーンもあった。
それらは彼女のVilogの熱心なファン達の手によって実現されたものだったそうだ。

広告としての活用

ところで"Bree"の公開するVilogには毎回素敵なBGMが付いている。
実はその中には音楽ダウンロード・サービスである「Amie Street」から提供された売り出し中の楽曲が使われていたことがある。
また劇中でガムを美味しそうに食べる"Bree"の姿が印象深く写されている場面もあった。

ただインターネットユーザーは、特に日本のユーザーはそういった「sell out(商業的な売り込み)」を
嫌う性質にあり、実際"Bree"のVilogにもそれに関しての辛らつなコメントが目立つ。
だが、展開の仕方によってはこれは大きな広告手法へとつながるのではないだろうか?
一時期日本ではオレンジ色のダウンジャケットを来た男性を何処でも見るようになった事があったが、
あれもTVタレントがドラマで着用していた事がブームの発端であったと記憶している。

また、"Bree"を演じるJessica Roseもその演技力と話題性からか様々なメディアに登場し、「出すぎじゃないか?」と"Bree"のファンに心配されるほどの有名人となっている。
今後もこの「存在しない"実在の"ネットアイドル」から目が離せない。

更新日時:2008年6月29日 01:56 | トラックバック(0)

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